アプレンティスシップ(徒弟制度)とは?企業の人材育成戦略に活かす方法と海外事例

公開日:2023.06.26 更新日:2023.11.29

1アプレンティスシップ(徒弟制度)とは
2アプレンティスシップ(徒弟制度)の成り立ち
3近年、アプレンティスシップ(徒弟制度)が注目を浴びる背景
4企業の人材育成にアプレンティスシップ(徒弟制度)を活用する方法
5海外事例:Multiverse

1. アプレンティスシップ(徒弟制度)とは

アプレンティスシップ(徒弟制度)とは、職業訓練の一形態であり、実践的な職場での研修や教育を通じて、従業員が必要なスキルや知識を身につけることができる制度です。経験豊富な職人や指導者(マスター)から直接技術や知識を学びながら、実践を積むことで職業技能を習得していく方法です。

2. アプレンティスシップ(徒弟制度)の成り立ち

徒弟制度は、中世ヨーロッパで始まったとされています。当時、職人や商人はギルドと呼ばれる組合を作り、新人が職人として働く前に一定期間の見習い期間を経ることが求められました。この見習い期間中に、職人から直接技術や知識を学び、独立して働けるようになるまで指導を受けました。

3. 近年、アプレンティスシップ(徒弟制度)が注目を浴びる背景

近年、テクノロジー人材の不足が深刻化しており、アメリカを中心にテクノロジー企業によるアプレンティスシップ(徒弟制度)を活用した人材育成の取り組みが盛んになっています。

徒弟制度は、主に職人のスキル習得を目的とした制度で、日本だけでなく、アメリカやヨーロッパでも長い歴史があります。細部に違いはあるものの、実務を通じて初級レベルの技能を身につけることを目的としています。


このアプレンティスシップをテクノロジー分野の人材育成に応用し、人材不足の解決に取り組む企業が急速に増えています。たとえば、民泊大手Airbnbは、科学・テクノロジー教育団体Kapor Centerと提携し、「Connect Software Engineering Apprenticeship」というプログラムを開始しました。


この6ヵ月間のプログラムでは、参加者はフルタイムで報酬を受け取りながら働き、同社のエントリーレベルのソフトウェアエンジニアリング職に必要なスキルを習得します。自主学習による基本的なコーディングスキルが必要ですが、過去のテクノロジー関連の経験やコンピューターサイエンスの学位は不要です。プログラム終了後、評価によっては、参加者はAirbnbの正規のエントリーレベルソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートできます。


また、Microsoft傘下のLinkedInでは、「REACH」という独自のテクノロジー人材育成プログラムを実施しています。REACHは、職によって1~5年を要するプログラムで、正社員として働きつつ、業務時間の20%を技能習得に充て、テクノロジースキルを身につけます。ただし、現在は米国限定のプログラムです。


REACHプログラムでは、アプレンティスのレベルが上がると、それに伴い習得技能の難易度も上がります。初期レベルでは、テクニカルサービスアナリストやテクニカルトレーナー、テクニカルライターなどの職が用意されています。アプレンティスのレベルがさらに上がると、データサイエンティスト、バックエンドエンジニア、AIエンジニアなどの職種に昇格することができます。


このような取り組みは、他の有名なテクノロジー企業でも行われており、Google、IBM、Microsoft、Accenture、Pinterestなどが「アプレンティス」を名乗るプログラムを導入し、テクノロジー人材の育成に力を入れています。


こうした動きからわかるように、アプレンティスシップ(徒弟制度)は、テクノロジー分野においても有効な人材育成手法として注目されています。企業は実務経験を通じて新人が必要なスキルを習得できるアプレンティスシップを活用することで、人材不足問題に対処し、競争力を維持・向上させることが可能です。


今後もテクノロジー分野における人材不足が続くと予想される中、アプレンティスシップ(徒弟制度)は、企業が新たな人材を育成し、自社のニーズに合わせたスキル習得を促す手段として、ますます重要性を増していくでしょう。企業は、海外の事例を参考に、自社に適したアプレンティスシップ・プログラムの導入を検討し、競争力を高めることが求められます。

4. 企業の人材育成にアプレンティスシップ(徒弟制度)を活用する方法

アプレンティスシップを企業の人材育成に活用するためには、以下のステップを踏むことが重要です。


・ニーズ分析
まずは企業の人材育成におけるニーズを把握し、アプレンティスシップが適用できる分野やポジションを特定します。これにより、どのようなスキルや知識が必要か、どの従業員が対象となるかを明確にできます。


・プログラム設計
アプレンティスシップ・プログラムを設計する際には、企業の目標や従業員のニーズに応じて柔軟にカスタマイズを行いましょう。具体的には、研修期間やカリキュラム、評価基準などを決定し、プログラム全体の構成を明確にします。


・マスター(指導者)の選定
経験豊富な指導者を選定し、彼らにアプレンティスの育成を任せます。指導者は、アプレンティスに対して適切な指導やフィードバックを提供し、継続的な成長をサポートします。


・継続的なサポートと評価
アプレンティスシップ・プログラムは、継続的なサポートと評価が重要です。定期的なミーティングやフィードバックを通じて、アプレンティスの進捗を確認し、必要に応じてサポートを強化します。また、プログラム終了時には、アプレンティスの習得スキルや知識を評価し、彼らの成長を可視化します。


・プログラムの改善
アプレンティスシップ・プログラムは、継続的な改善が求められます。プログラムが終了した後も、参加者や指導者からのフィードバックを収集し、次回のプログラムに反映させることで、より効果的な人材育成が可能となります。

人材育成を進めるならリスキリングも検討すべき

リスキリングとは、所属している企業で働きながら、個人が成長分野の新しい技術やスキルを習得するために学ぶことです。DX(デジタルトランスフォーメーション)が進む時代になり、どの業界でもリスキリングをしなければ企業としての存続が厳しい状況に陥っています。

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5. 海外事例:Multiverse

Multiverse(旧WhiteHat)は、イギリスのアプレンティスシップ・プロバイダーであり、企業と若者をつなぐプラットフォームを提供しています。Multiverseは、デジタルマーケティングやデータアナリティクスなど、現代のビジネスに必要なスキルを持つアプレンティスを育成し、企業にマッチングさせることを目指しています。


同社のアプレンティスシップ・プログラムは、カリキュラムが充実しており、職業資格を取得するためのサポートも提供しています。企業はMultiverseと提携することで、自社のニーズに合ったアプレンティスを採用し、独自の研修プログラムを設計できます。また、アプレンティスは実務経験を積みながら、専門的なスキルや知識を学ぶことができます。


Multiverseは、企業とアプレンティス双方のメリットを最大化するため、継続的なサポートやコーチングを提供しています。たとえば、アプレンティスはプログラム中、専門的なメンターやコーチから定期的なフィードバックを受け、自己改善に努めます。また、企業はアプレンティスのスキル習得状況を把握し、効果的な人材育成を実現できるようサポートされます。


Multiverseの成功事例は、アプレンティスシップが現代の企業環境においても有効であることを示しています。企業は、アプレンティスシップを活用することで、柔軟かつ効果的な人材育成を実現でき、競争力の向上や人材不足の解消につながります。

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